ずれている日

その男が結婚してから、10年ほどの月日が経っていた。
その仲はいささか冷えかけていたが、離婚をすれば莫大な金がかかるので、
その関係はそのままであった。

その日も男は朝早く起き、会社へ行く準備を始めた。
食卓に着き、コーヒーを飲みながら、ふとなにか違和感を感じた。
何かが、いつもと違う。
やがてその原因に気が付いた。妻が、やけに上機嫌なのだ。
朝の早い時間でもあり、それほど仲が良いわけでもないのに。
朝食を口へと運びながらも、その味は殆ど分からず、男は考え続けた。
それとなく聞いてみようかとも思ったが、そんなことを聞くことはどうも野暮な気がして、
気が遅れた。だが、なにかすっきりしない物は残ってしまった。
仕方のないままに、男は朝食を終え、鞄を持って会社へと出勤した。

男が出て行った後、男の妻はある場所へ電話をした。
浮気相手などではない。病院への電話だった。
「先日はありがとうございました。先生の処方してくださった薬をそれとなく飲ませたおかげで、
主人の何かとうるさく言う癖が抑えられて、私も朝から嫌な気持ちにならなくて済みました…」



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