引き出しの中に

 男が会社の自分の机につき、なにげなく引き出しを開けると、
自分の物ではないハサミがあった。しかし、さほど気にとめずに、
引き出しを閉めた。
その後で、物をしまうために引き出しを開けると、ハサミは消え、
代わりにナイフがあった。男は不思議に思ったが、上司に仕事をたのまれ、
引き出しを閉めて、仕事を再開した。
しかし、心の中では、一つの考えができていた。また引き出しをあけたら、
何か出てくるのではないか。
男はこの気持ちに負け、引き出しを開けた。ナイフの代わりにペンがあった。
閉めて開けると、辞書がでてきた。また閉めて開けると、ハトが出てきた。それは
開いている窓から飛んでいった。更に閉めて開けると、腕時計が出てきた。また
閉めて開けると、メモ用紙が出てきた。パラパラとめくってみたが、白紙だった。
再び閉めて開けた。何故かメモ用紙はそのままだった。しかし、一番上に文字が書いてあった。
「リストラ」という文字。
男は、この会社の社長は手品がうまかった事を思い出した。


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