題材

男は芸術家だった。しかし、絵の才能はあるのだが、題材が無い。
画商は毎日のように男の家に来て、「書きあがりましたか」と聞く。
題材が無いのだから、書きあがるわけが無い。
待ってくれるとしても、あと一、二週間だろう。
ある日男は、全てを投げ出し、酒をのんだ。酒が無くなったら乏しい金で酒を買い、また飲んだ。
そのとき、男についに題材が浮かんだ。

「素晴らしい絵ですね。ついに完成しましたか」
「はい。思い切り諦めると、かえって案が浮かんでくる物ですね」
「しかし、幻想的で不思議な絵ですな。まるで、アル中患者の妄想のようだ。ピンク色の像とは…」


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